複数人で所有する不動産では、持分割合の決め方ひとつで、将来的なトラブルや損失に繋がる可能性があります。
共有する不動産の取得方法や資金負担、さらには相続の状況など、様々な要素が絡み合い、最適な割合を導き出すのは容易ではありません。
そのため、事前にしっかりと理解し、適切な決め方を知ることは非常に重要です。
そこで今回は、不動産購入時と相続時、そして住宅ローンの種類別のケースを比較しながら、持分割合の決め方を解説します。
不動産購入時の持分割合の決め方
資金負担割合に応じた決定方法
不動産を複数名で共同購入する際、最も一般的な持分割合の決め方は、各人の資金負担割合を基にする方法です。
これは、シンプルで公平性も高く、後々のトラブルを回避する上で有効な手段となります。
例えば、1,000万円の不動産をAさんが600万円、Bさんが400万円負担した場合、Aさんの持分割合は60%(6/10)、Bさんは40%(4/10)となります。
この割合は、不動産の所有権だけでなく、維持費や修繕費の負担割合にも反映されます。
具体的な計算方法と注意点
計算方法は、シンプルです。
各人の負担額を合計額で割ることで、割合を算出します。
しかし、計算結果が綺麗に割り切れない場合、端数の処理方法に注意が必要です。
小数点以下を切り捨てる、四捨五入するなど、様々な方法がありますが、税務上の影響を考慮する必要があります。
持分割合と実際の負担額に差が生じた場合は、その差額分は贈与とみなされ、贈与税の課税対象となる可能性があるのです。
年間110万円を超える贈与には贈与税が課せられますので、端数の調整は慎重に行い、贈与税が発生しないように注意しましょう。
トラブル防止のための対策
トラブルを未然に防ぐためには、合意事項を明確に文書化することが重要です。
購入前に、共有者全員で持分割合、維持費・修繕費の負担方法、売却時の手続きなどについて合意し、書面で残しておきましょう。
この書面は、将来的なトラブル発生時の証拠となるだけでなく、共有者間の認識のずれを防ぐ効果も期待できます。
また、弁護士や税理士などの専門家に相談し、法的な観点からのアドバイスを受けるのも有効です。

相続時の持分割合の決め方
法定相続分に基づく決定方法
相続によって不動産を共有する場合、遺言書がない場合は法定相続分に基づいて持分割合が決まります。
法定相続分は、民法で定められた相続人の順位と割合を示したもので、配偶者、子、親、兄弟姉妹などの血縁関係によって割合が異なります。
例えば、配偶者と子供が2人いる場合、配偶者が1/2、子供それぞれが1/4の持分割合となります。
この割合は、相続財産の全体に対する割合であり、不動産の価値や種類に関わらず適用されます。
遺言書による決定方法
被相続人が遺言書を残している場合は、原則として遺言書の内容に従って持分割合が決まります。
遺言書には、具体的な持分割合だけでなく、特定の相続人に不動産を相続させる旨の記載も含まれる可能性があります。
ただし、遺言書の内容が法定相続分を下回る場合、遺留分(法律で保障された最低限の相続分)の侵害にあたる可能性があります。
この場合は、遺留分を侵害された相続人が、遺留分を確保するための請求を行うことができます。
相続税への影響と節税対策
相続税の評価額は、持分割合に影響を受けます。
相続税の計算においては、不動産の評価額に持分割合を乗じて、相続税の課税対象となる財産を算出します。
そのため、持分割合の決定は相続税額に直結する重要な要素となります。
節税対策としては、相続税の申告期限までに、相続財産の評価額を精査し、適切な節税対策を検討することが重要です。
専門家への相談が有効です。
住宅ローンと持分割合
連帯保証型ローン
連帯保証型ローンでは、主債務者と連帯保証人の2名でローンを組む形式です。
通常、不動産の所有権は主債務者名義となり、連帯保証人は返済不能になった場合に責任を負う立場です。
そのため、連帯保証人が持分割合を持つケースは少ないですが、頭金の一部を負担した場合などは、その負担割合に応じて持分割合が決定されることもあります。
連帯債務型ローン
連帯債務型ローンは、複数の債務者が連帯して返済責任を負うローンです。
この場合、各債務者の返済額に応じて持分割合を決定するのが一般的です。
例えば、500万円のローンをAさんが300万円、Bさんが200万円負担した場合、Aさんの持分割合は60%、Bさんは40%となります。
この方式では、住宅ローン控除を複数人で受けられるメリットがあります。
ペアローン
ペアローンは、複数の債務者がそれぞれ個別にローンを組む方式です。
この場合、各債務者のローン金額と頭金などを合計した金額を基に、持分割合を決定します。
例えば、Aさんが300万円のローンと100万円の頭金、Bさんが200万円のローンと50万円の頭金で不動産を購入した場合、Aさんの持分割合は62.5%(400万円 ÷ 650万円)、Bさんは37.5%(250万円 ÷ 650万円)となります。
この方式では、団体信用生命保険に各人が加入できるメリットがあります。
まとめ
今回は、不動産購入時と相続時、そして住宅ローンの種類別に分けて、持分割合の決め方について解説しました。
持分割合は、将来的なトラブルや税金負担に大きく影響するため、資金負担割合や法定相続分、住宅ローンの種類などを考慮し、慎重に決定することが重要です。
計算方法や注意点、トラブル防止策を理解した上で、共有者間で十分な話し合いを行い、合意に基づいた持分割合を設定しましょう。
必要であれば、弁護士や税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
特に、相続や贈与に関連する税金については、専門家のアドバイスが不可欠です。
適切な手続きと準備によって、安心できる不動産共有を実現しましょう。
当社は、お客さま一人一人のお悩みに寄り添い、大手不動産会社で培ったノウハウを活かしながらご提案を行っております。
不動産に関してお悩みの方は、どんな疑問やご要望でもお気軽に当社にご相談ください。